利回り計算 — 結論「表面利回りだけ見て買うと損する」
不動産投資の広告でいちばん目立つのが「利回り○%」という数字ですよね。実は、ひとくちに「利回り」と言っても、計算方法によって3〜4種類あり、同じ物件でも見方を変えると数値が大きく変わります。広告でよく使われる「表面利回り」は、実際の手取りからかなり乖離しています。
結論を先に言うと、不動産投資の判断には「実質利回り」と「キャッシュフロー(CF)利回り」、長期判断ではIRRを組み合わせて見るのが王道です。表面利回りだけで判断すると、買ったあとで「思ったほど手元にお金が残らない…」と後悔しがちです。
この記事では2026年5月時点の一般情報として、4種類の利回りの計算式・違い・使い分けを中立に整理します。具体的な投資判断は宅地建物取引士・FP・税理士等の専門家に相談してください。
4種類の利回り(早見表)
| 種類 | 計算式(概略) | 用途 |
|---|---|---|
| 表面利回り(グロス) | 年間家賃収入 ÷ 物件価格 | 物件のスクリーニング |
| 実質利回り(ネット/NOI利回り) | (年間家賃 − 運営経費) ÷ (物件価格+諸費用) | 物件本体の収益性比較 |
| キャッシュフロー(CF)利回り | (年間家賃 − 経費 − ローン返済) ÷ 自己資金 | 自己資金に対する手元キャッシュ |
| IRR(内部収益率) | 売却益も含めた期間収益率 | 長期投資の総合判断 |
表面利回り(グロス利回り)
表面利回り = 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
もっとも単純な指標で、不動産広告でよく見る「利回り○%」はほぼこれです。経費・諸費用・空室を一切考慮しないため、実際の手取りより大きい数値になります。
用途は「物件のざっくりスクリーニング」。表面利回り5%以下は東京都心、6〜8%は地方主要都市、10%超は地方郊外や築古、というエリア感をつかむには便利です。
実質利回り(ネット/NOI利回り)
実質利回り = (年間家賃収入 − 年間運営経費) ÷ (物件価格+購入諸費用) × 100
表面利回りに対し、運営経費(固定資産税・管理費・修繕積立金・損害保険料・管理委託料・空室損失等)と購入諸費用を反映した、より実態に近い指標です。NOI(Net Operating Income)利回りとも呼ばれます。
運営経費に含める主な項目
- 固定資産税・都市計画税
- 管理費・修繕積立金(区分所有の場合)
- 建物管理委託費・賃貸管理委託費
- 火災・地震保険料
- 修繕費・原状回復費(平均化)
- 空室損失(空室率10〜20%の見込み)
都心ワンルームの表面利回り3.5%は、運営経費を引くと実質利回りで1.5〜2.5%に落ちることが一般的。地方アパート表面利回り10%でも、実質利回りで6〜7%に落ち着くケースが多いです。
キャッシュフロー(CF)利回り
CF利回り = (年間家賃 − 経費 − 年間ローン返済額) ÷ 自己投下資金 × 100
実質利回りからさらにローン返済を引いた「実際に手元に残る現金」を、自己資金に対する利回りで示したものです。レバレッジを効かせた不動産投資では、この指標がもっとも生活実感に近い数値になります。
レバレッジ効果の例
| 条件 | 全額自己資金 | 融資活用(自己資金20%) |
|---|---|---|
| 物件価格 | 5,000万円 | 5,000万円 |
| 自己資金 | 5,000万円 | 1,000万円 |
| 融資 | 0 | 4,000万円(金利2%・25年) |
| 年間NOI | 300万円 | 300万円 |
| 年間ローン返済 | 0 | 約203万円 |
| 年間CF | 300万円 | 約97万円 |
| CF利回り | 6.0% | 9.7% |
※2026年5月時点のシンプル試算。実際は金利変動や空室で大きく変わります。レバレッジを効かせると自己資金あたりのCF利回りは上がりますが、金利上昇・空室で逆方向にも振れます。
IRR(内部収益率)
IRRは、購入から売却までの全期間のキャッシュフローと売却益を考慮した、もっとも総合的な収益率指標です。「投資全体としていくらの年率リターンか」を示します。
計算は表計算ソフトのIRR関数を使うのが一般的です。例えば10年保有して売却するシナリオで、毎年のCFと売却時の手取りを入力し、IRR関数で算出します。
IRRは「保有期間中のCF」と「売却時の値上がり・値下がり」を同時に評価できるため、出口戦略を含めた投資判断に向いています。IRR 5〜7%が一つの目安と言われることが多いですが、リスクとリターンのバランスで判断します。
エリア別 利回り目安(2026年5月時点)
| エリア | 表面利回りの目安 | 実質利回りの目安 |
|---|---|---|
| 東京23区(都心3区) | 3〜5% | 1.5〜3% |
| 東京23区(周辺) | 4〜6% | 2〜4% |
| 横浜・川崎・大阪・名古屋 | 5〜7% | 3〜5% |
| 地方政令市 | 7〜9% | 4〜6% |
| 地方都市・郊外 | 10%以上 | 5〜8% |
※不動産流通推進センター等の公開データや市場感を参考にした目安。実際の数値は物件・タイミングで大きく異なります。
具体的な計算例(中古区分マンション)
東京近郊の中古ワンルームを想定して、4つの利回りを計算してみます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 物件価格 | 1,800万円 |
| 購入諸費用 | 140万円(物件価格の約7.8%) |
| 年間家賃収入(満室) | 96万円(月8万円×12) |
| 年間運営経費 | 30万円(管理費・修繕積立金・固定資産税・保険・空室損) |
| 自己資金 | 500万円(頭金360万円+諸費用140万円) |
| 融資額 | 1,440万円(金利2.5%・25年) |
| 年間ローン返済額 | 約77万円 |
この物件の各利回り。
- 表面利回り = 96 ÷ 1,800 = 約5.3%
- 実質利回り = (96−30) ÷ (1,800+140) = 約3.4%
- CF利回り = (96−30−77) ÷ 500 = 約−2.2%(赤字)
表面利回り5.3%は一見悪くない数字ですが、CFはマイナス。「税効果」や「物件値上がり」がないと割に合わない構造です。これがワンルームマンション投資でよくあるパターンです。
利回り判断のチェックリスト
- 表面利回りだけで判断していないか
- 実質利回りに空室率10〜20%を織り込んでいるか
- 大規模修繕費(10〜15年ごと数百万円)を平均化して経費に含めたか
- ローン返済を加味したCF利回りも計算したか
- 金利が2%上昇した場合のCFも試算したか
- 売却を含むIRRで長期収益性を確認したか
- 「広告利回り」と「実利回り」の差を理解したか
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よくある質問
Q. 不動産広告の利回りはどれを指していますか?
A. ほぼ全て「表面利回り(グロス)」です。経費・諸費用・空室を考慮しない数値なので、実際の手取りはこれより低くなります。判断する際は必ず実質利回り・CF利回りも計算してください。
Q. 何%以上の利回りなら投資する価値がありますか?
A. 一概には言えませんが、CF利回りが自己資金に対して5〜8%以上、IRRで5%以上が一つの目安とされます。立地・築年数・リスク水準で許容範囲は変わるので、エリア相場と比較して判断してください。
Q. 利回りが高い物件は買って大丈夫ですか?
A. 利回りが高いには理由があります。地方郊外で需要が薄い、築古で修繕費がかさむ、再建築不可、訳あり物件、などの可能性があります。表面利回り15%超の物件は特に慎重に背景を調べてください。
Q. 都心の低利回り物件はなぜ買われるのですか?
A. 「キャピタルゲイン(値上がり益)」と「資産価値の安定性」が理由です。賃料は低くても、長期的に物件価値が落ちにくく、売却時に値上がりすることもあります。IRRで評価すると見方が変わります。
Q. 空室率はどれくらいで見込むべきですか?
A. 立地・物件タイプで変わりますが、都心ワンルームで5〜10%、地方アパートで15〜20%が安全圏の目安です。「満室前提」のシミュレーションは現実的ではありません。
Q. NOIとは何ですか?
A. Net Operating Income(純営業収益)の略で、年間家賃収入から運営経費を引いた数値です。ローン返済前の物件本体の収益力を示し、実質利回り(NOI利回り)の分子として使われます。
Q. IRRを計算するのは難しいですか?
A. ExcelやGoogleスプレッドシートのIRR関数を使えば計算自体は簡単です。各年のキャッシュフローと、最終年の売却時手取り(税引後)を入力するだけです。シナリオごとに比較すると出口戦略の判断に役立ちます。
Q. 利回りが下がっても買うべきタイミングはありますか?
A. 金利低下局面や、エリアの再開発で将来の家賃上昇・地価上昇が期待できる場合は、現時点の利回りが低くてもIRRで見ると合理的なケースがあります。短期の表面利回りだけでなく、中長期の視点で判断してください。
※本記事は2026年5月時点の一般情報です。エリア相場・金利水準は変動します。具体的な投資判断は宅地建物取引士・FP・税理士等の専門家に相談してください。投資は自己責任が原則です。最新の市場データは国土交通省・不動産流通推進センター等の公式情報をご確認ください。