不動産売却の税金 — 結論「3,000万円特別控除を使えるかで世界が変わる」
不動産を売ろうかと考えはじめたとき、いちばん気になるのは「結局いくら手元に残るの?」ですよね。売却価格そのものではなく、そこから仲介手数料・税金・諸費用を引いた「手取り」で見ないと、住み替え予算も次の人生設計も立てられません。
結論から先に言うと、マイホームの売却なら3,000万円特別控除を適用できるかどうかで、譲渡所得税の負担が劇的に変わります。よくある住み替えのケースであれば、特別控除のおかげで譲渡所得税ゼロで済むことも珍しくありません。逆に、控除要件を満たさない投資用物件や相続物件の売却では、所有期間によっては売却益の約39%が税金で持っていかれることもあります。
この記事では、2026年5月時点の一般情報として「譲渡所得税の計算式」「所有期間別の税率」「3,000万円特別控除」「取得費の出し方」「印紙税・登録免許税」を整理します。個別事案は税理士・不動産仲介業者など専門家に相談を併用してください。
不動産売却でかかる税金の全体像
不動産を売却したときにかかる税金は、ざっくり以下の4種類です。
| 税金 | かかるタイミング | 金額の目安 | 負担者 |
|---|---|---|---|
| 印紙税 | 売買契約書作成時 | 契約金額に応じ1,000円〜数万円 | 売主・買主が原則1通ずつ |
| 登録免許税(抵当権抹消) | 引渡し・登記時 | 不動産1個につき1,000円 | 売主(住宅ローン残債がある場合) |
| 譲渡所得税(所得税・住民税) | 翌年の確定申告時 | 譲渡所得×税率(15〜39%目安) | 売主 |
| 消費税 | 建物部分の対価に課税(個人マイホームは原則非課税) | 建物価格×10% | 事業用建物の売主 |
※2026年5月時点の一般情報です。最新の税率・制度は国税庁・法務省の公式情報でご確認ください。個人がマイホーム(居住用財産)を売却する場合、消費税は原則かかりません。
譲渡所得税 — もっとも金額が大きい
不動産売却の税金の中で、圧倒的に金額が大きいのが譲渡所得税です。給与所得とは別枠で計算する「分離課税」で、売却した翌年の確定申告で納付します。
譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除
- 取得費:購入時の価格 − 建物の減価償却費。土地・建物の購入代金、購入時の仲介手数料、登録免許税、不動産取得税などが含まれます
- 譲渡費用:売却時の仲介手数料、印紙税、立退料、解体費(更地で売却した場合)など
- 特別控除:マイホーム売却なら最大3,000万円(後述)
所有期間で税率が大きく変わる
譲渡所得税の税率は「売却した年の1月1日時点」の所有期間で判定します。実際の所有日数ではなく「1月1日基準」である点に注意が必要です。
| 区分 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計税率(復興特別所得税込み) |
|---|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 約39.63% |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 約20.315% |
| 10年超のマイホーム軽減税率 | 10年超かつ居住用 | 軽減税率 | 軽減税率 | 6,000万円以下部分が約14.21%、超過部分は約20.315% |
短期と長期で税率が約2倍違うので、所有期間が5年に近い場合は「1月1日基準で何年か」を必ず確認しておきましょう。たとえば2021年6月に取得した物件を2026年4月に売ると、実際には4年10か月の保有ですが、2026年1月1日時点ではまだ4年と判定され短期譲渡扱いになる、というような落とし穴があります。
3,000万円特別控除(マイホーム特例)
個人が居住用財産(マイホーム)を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。これが適用できれば、よほどの高額売却でない限り譲渡所得税はかからないケースが多くなります。
主な適用要件(一般論)
- 自分が住んでいる(または住まなくなってから3年経過する日が属する年の12月31日までに売る)家屋・敷地であること
- 売却の前年・前々年に同じ特例や買い替え特例を使っていないこと
- 売主と買主が親子・夫婦など特別な関係にないこと
- 居住期間の長短は問わない(短期所有でも適用可)
実は、要件の細かい部分は毎年のように調整が入ります。空き家にしてから3年以内・店舗併用住宅・配偶者居住権など、個別事案では判断が分かれることが多いので、適用前提で売却計画を立てる場合は必ず税理士に確認してください。
取得費の計算 — 不明なら売却価格の5%
譲渡所得計算で意外と難しいのが「取得費」の算定です。購入時の契約書・領収書がきちんと残っていれば問題ありませんが、相続物件や古い物件では資料が散逸しているケースが多いです。
取得費が不明な場合「概算取得費(売却価格の5%)」
取得費が不明な場合、売却価格の5%を取得費とみなして計算することが認められています(概算取得費)。ただしこの場合、譲渡所得が大きく膨らみ、税負担が想定外に重くなりがちです。
| 売却価格 | 概算取得費(5%) | 譲渡所得(費用控除後) | 短期譲渡時の税額目安(39.63%) |
|---|---|---|---|
| 3,000万円 | 150万円 | 約2,800万円 | 約1,110万円 |
| 5,000万円 | 250万円 | 約4,650万円 | 約1,843万円 |
※譲渡費用を売却価格の1〜2%として簡略試算。マイホーム特例適用なしの場合。
正直なところ、概算取得費を使うと税負担がとんでもなく大きくなります。古い住宅ローン契約書・購入時の領収書・通帳の振込履歴など、どんな間接資料でも取得費の証拠として活用できる可能性があるので、捨てる前に税理士に相談する価値があります。
印紙税・登録免許税の目安
印紙税(売買契約書)
不動産売買契約書には印紙税がかかります。2027年3月31日までは軽減税率が適用される予定です(2026年5月時点)。
| 契約金額 | 本則税率 | 軽減税率(2027年3月末まで) |
|---|---|---|
| 500万円超 1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
| 1,000万円超 5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
| 1億円超 5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
登録免許税(抵当権抹消)
住宅ローン残債がある状態で売却する場合、引渡し時に抵当権抹消登記をします。登録免許税は不動産1個につき1,000円。土地と建物それぞれ1個ずつなら計2,000円です。司法書士に依頼する場合の報酬は別途1.5〜3万円程度が目安です。
手取りを最大化するためのチェックリスト
- 所有期間が5年に近い場合「1月1日基準」で長期譲渡扱いになるタイミングまで待てるかを検討
- マイホーム売却なら3,000万円特別控除の適用要件を確認
- 10年超所有のマイホームは軽減税率と特別控除の併用可否を確認
- 取得費の証拠資料(購入契約書・領収書・住宅ローン契約書)を探す
- 譲渡費用に算入できるもの(仲介手数料・印紙税・解体費等)を漏れなく集計
- 住宅ローン残債がある場合は抵当権抹消・司法書士費用を見込む
- 確定申告は売却した翌年2月16日〜3月15日に必ず行う(特例適用は確定申告が必須)
- 相続物件は「取得費加算の特例」「相続空き家3,000万円特別控除」が使えないかチェック
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よくある質問
Q. マイホームを売って利益が出たら必ず確定申告が必要ですか?
A. 譲渡所得がプラスになった場合、または3,000万円特別控除などの特例を使う場合は確定申告が必要です。特例適用は申告が要件なので、特例で税額がゼロになる場合でも申告を忘れないようにしましょう。売却した翌年2月16日〜3月15日が申告期間です。
Q. 譲渡所得税はいつ・どこに支払いますか?
A. 所得税は確定申告と同時(原則3月15日まで)に納付、住民税は申告内容を元に6月以降の納付書で4回に分けて支払うのが一般的です。納税資金は売却代金からあらかじめ分けて確保しておくと安心です。
Q. 取得費が不明なときはどうすればよいですか?
A. 概算取得費(売却価格の5%)を使う方法が認められていますが、税負担が大きくなりがちです。購入時の契約書・領収書・住宅ローン契約書・通帳の振込履歴など、間接的な資料でも取得費の根拠になる場合があるので、税理士に相談したうえで実額計算を試みる価値があります。
Q. 3,000万円特別控除は何度でも使えますか?
A. 過去2年以内に同じ特例(または買い替え特例など)を使っていなければ、原則として複数回利用できます。住み替えを繰り返すたびに使える特例ですが、要件は細かいので個別判断は税理士に確認してください。
Q. 投資用マンションを売っても3,000万円特別控除は使えますか?
A. 居住用財産が対象の特例なので、投資用物件は対象外です。投資用は通常の譲渡所得課税のみが適用され、短期譲渡なら約39.63%、長期譲渡なら約20.315%が課税されます。
Q. 相続した実家の売却で使える特例はありますか?
A. 「取得費加算の特例(相続開始から3年10か月以内)」や「相続空き家の3,000万円特別控除(被相続人居住用財産の特例)」が使える可能性があります。要件が細かいので、相続物件の売却前に税理士・税務署に確認するのがおすすめです。
Q. 売却益で住み替えるときに使える税制特例はありますか?
A. 「居住用財産の買い替え特例」「譲渡損失の損益通算・繰越控除」など、住み替えのための特例制度があります。3,000万円特別控除との併用関係や、買い替え後の住宅ローン控除との関係で有利不利が変わるので、シミュレーションが必須です。
Q. 売却損(譲渡損失)が出た場合、税金は還付されますか?
A. 通常の不動産売却での譲渡損失は、原則として他の所得と損益通算できません。ただしマイホーム売却の譲渡損失は、一定要件を満たせば給与所得など他の所得と損益通算・3年間の繰越控除が認められる特例があります。
Q. 譲渡所得税の計算は自分でできますか?
A. シンプルな売却であれば国税庁のサイトの「確定申告書等作成コーナー」で自力計算も可能です。ただし特例適用・取得費の証拠資料・買い替え時の調整など、判断ポイントが多い案件は税理士への依頼が安心です。
※本記事の税率・特例は2026年5月時点の一般情報です。個別事案の譲渡所得税計算や特例適用は税理士・国税庁公式情報で必ずご確認ください。最新の制度改正は国税庁・国土交通省の公式情報をご参照ください。