養育費 — 結論「算定表で目安が分かるが、個別事情で変わる」
離婚するときの大きな関心事の一つが養育費。「いくらもらえるのか」「いくら払うべきなのか」が分からないと、協議は前に進みません。結論を先に言うと、養育費は最高裁判所が公表する「標準算定表」が実務の基準になっています。家庭裁判所の調停・審判でもこの算定表をベースに決められることが多く、協議離婚でも基準として広く参照されています。
正直なところ、算定表はあくまで目安。子供の私立学校進学、高額医療費、特別な習い事などがあると、表の金額を上回る合意になることもあります。逆に、義務者(支払う側)が借金や養育負担を抱えている場合は下振れすることも。
この記事では2026年5月時点の一般情報として、最高裁標準算定表の早見、年収別・子供数別の養育費目安、不払い対策、税務扱いまで中立に整理します。個別の養育費協議と請求は、弁護士・家庭裁判所・養育費相談支援センターなど専門機関への相談を必ず併用してください。
最高裁標準算定表 — 2019年に改訂
最高裁判所が2019年12月に公表した「改定標準算定方式・算定表」が現在の実務基準です。義務者(支払う側)と権利者(受け取る側)の年収・子供の人数・年齢から月額を算出する仕組み。算定表は最高裁公式サイトで公開されています。
算定の前提:
- 給与所得者と自営業者で表が分かれる(経費の扱いが違うため)
- 子供の年齢区分:0〜14歳と15〜19歳の2区分
- 義務者・権利者の年収は源泉徴収票の支払金額(給与所得者)または確定申告の所得金額(自営業者)
- 家庭裁判所では原則この算定表が使われるが、合意があれば調整可能
年収別・子供数別 養育費早見表(給与所得者・目安)
※以下はあくまで一般的な目安。実際の算定表は最高裁公式の表をご確認ください。義務者が支払う月額の中央値帯を示しています。
子供1人(0〜14歳)の場合
| 義務者の年収(給与)↓ / 権利者の年収(給与)→ | 0円 | 200万円 | 400万円 | 600万円 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 2〜4万円 | 1〜2万円 | 1万円前後 | 1万円以下 |
| 500万円 | 4〜6万円 | 2〜4万円 | 2〜4万円 | 1〜2万円 |
| 700万円 | 6〜8万円 | 4〜6万円 | 4〜6万円 | 2〜4万円 |
| 1,000万円 | 10〜12万円 | 8〜10万円 | 6〜8万円 | 4〜6万円 |
| 1,500万円 | 14〜16万円 | 12〜14万円 | 10〜12万円 | 8〜10万円 |
子供2人(0〜14歳)の場合
| 義務者の年収(給与)↓ / 権利者の年収(給与)→ | 0円 | 200万円 | 400万円 | 600万円 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 4〜6万円 | 2〜4万円 | 1〜2万円 | 1〜2万円 |
| 500万円 | 6〜8万円 | 4〜6万円 | 2〜4万円 | 2〜4万円 |
| 700万円 | 8〜10万円 | 6〜8万円 | 6〜8万円 | 4〜6万円 |
| 1,000万円 | 14〜16万円 | 12〜14万円 | 10〜12万円 | 6〜8万円 |
| 1,500万円 | 20〜22万円 | 18〜20万円 | 14〜16万円 | 10〜12万円 |
子供3人(全員0〜14歳)の場合
| 義務者の年収(給与)↓ / 権利者の年収(給与)→ | 0円 | 200万円 | 400万円 | 600万円 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 4〜6万円 | 2〜4万円 | 2〜4万円 | 1〜2万円 |
| 500万円 | 8〜10万円 | 6〜8万円 | 4〜6万円 | 2〜4万円 |
| 700万円 | 10〜12万円 | 8〜10万円 | 6〜8万円 | 4〜6万円 |
| 1,000万円 | 16〜18万円 | 14〜16万円 | 12〜14万円 | 8〜10万円 |
| 1,500万円 | 22〜24万円 | 20〜22万円 | 18〜20万円 | 14〜16万円 |
※上記は2019年改定標準算定表をもとにした概算目安。正確な数値は最高裁判所公式の算定表(PDF)を参照してください。子供が15〜19歳の場合、上記より2〜4万円程度高めになる傾向があります。
算定表どおりが原則 — 個別事情で調整
算定表は基準ですが、以下のような事情があれば調整余地があります。
- 私立学校・大学進学費用:算定表は公立を前提。私立進学なら別途協議
- 習い事・塾の特別費用:月数万円規模なら加算協議
- 高額医療費・障害:継続的負担として加算対象
- 義務者の住宅ローン負担:婚姻時の住宅で権利者が居住する場合、ローン分が考慮されることも
- 面会交流の頻度・宿泊負担:実費按分の合意例も
不払い対策 — 養育費の取りっぱぐれを防ぐ
厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査」では、養育費を継続的に受け取れている母子世帯は3割前後にとどまり、不払い問題は社会的課題になっています。対策として以下が有効です。
事前対策(離婚協議時)
- 公正証書(強制執行認諾文言付き)で養育費を取り決め
- 家庭裁判所の調停調書・審判書で取り決め
- 支払いの自動振替設定
- 連帯保証人の検討(同意があれば)
不払い発生時の対応
- 履行勧告・履行命令(家庭裁判所による督促)
- 強制執行(給与差押え・預貯金差押え)。公正証書または調停調書があれば可能
- 第三者からの情報取得手続き(2020年民事執行法改正で勤務先・預貯金情報の照会が容易に)
- 自治体の養育費保証・立替制度(地域による)
2020年の民事執行法改正で、養育費の強制執行は以前より大幅に使いやすくなりました。公正証書または調停調書があるかどうかで、いざというときの回収可能性が大きく変わります。
養育費の税務扱い
- 受け取る側:通常の養育費(毎月の生活費)は所得税の課税対象外
- 支払う側:所得控除(扶養控除)の対象になるかは要件次第。生計を一にしていれば離婚後も扶養控除を受けられる場合あり
- 一括払い:相当額を超える一括は贈与税が課される可能性。原則は毎月払いが安全
- 住民税:受け取る養育費は住民税の課税対象外
所得税・住民税の基本構造は所得税と住民税の違いもあわせてご覧ください。
養育費はいつまで払う? — 終期の決め方
| 終期の典型例 | 備考 |
|---|---|
| 満18歳到達時(成年年齢) | 2022年4月の成年年齢引下げ後の標準パターン |
| 満20歳到達時 | 従来の標準。今も多い |
| 大学卒業時(満22歳に達した後の最初の3月) | 大学進学を見込む合意 |
2022年の成年年齢引下げ後も、養育費の支払い終期は個別合意で決められるのが原則。大学進学が一般化している現在、大学卒業時まで合意する例も増えています。
養育費協議のチェックリスト
- 双方の年収(直近の源泉徴収票・確定申告)
- 子供の人数と年齢区分
- 算定表での月額目安の確認
- 進学費用・医療費等の特別費用の協議
- 支払い終期の合意(18歳/20歳/22歳)
- 支払い方法(口座振込・自動振替)
- 不払い時の対応(公正証書・強制執行認諾)
- 面会交流の頻度・方法
- 将来の事情変更(再婚・収入変動)への対応条項
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よくある質問
Q. 養育費の算定表はどこで見られますか?
A. 最高裁判所の公式サイトで「養育費・婚姻費用算定表(2019年改定)」として公開されています。給与所得者用・自営業者用、子供の人数・年齢区分ごとに表が用意されています。家庭裁判所の調停・審判でも標準として使われます。
Q. 算定表より高い金額を請求できますか?
A. 双方の合意があれば可能です。私立学校進学費用、高額医療費、特別な習い事などの個別事情があれば、算定表を上回る金額で合意するケースもあります。家庭裁判所の調停でも個別事情を主張すれば調整余地があります。
Q. 養育費はいつまで払う必要がありますか?
A. 個別合意によります。2022年の成年年齢引下げ後も、満18歳・満20歳・大学卒業時など、いずれの終期も合意可能です。大学進学を見込む場合は「満22歳に達した後の最初の3月まで」とする例が増えています。
Q. 養育費を払わない元配偶者から強制的に回収できますか?
A. 公正証書(強制執行認諾文言付き)または家庭裁判所の調停調書・審判書があれば、給与差押え・預貯金差押えが可能です。2020年の民事執行法改正で、勤務先や預貯金情報の照会も以前より容易になりました。
Q. 養育費を一括で受け取ることはできますか?
A. 双方の合意があれば可能ですが、相当額を超える一括受領は贈与税が課される可能性があります。原則は毎月払いが税務上も安全。一括の場合は税理士相談を推奨します。
Q. 受け取った養育費は税金がかかりますか?
A. 通常の毎月の養育費は所得税・住民税の課税対象外です。一括で多額に受領した場合は贈与税の対象になることがあります。受け取り方を「相当額の毎月払い」にしておくのが税務上安全です。
Q. 再婚したら養育費は減額・終了しますか?
A. 権利者(受け取る側)が再婚し、子供が新配偶者と養子縁組した場合、養親の扶養義務が優先されるため、養育費の減額や終了を求められる可能性があります。義務者(支払う側)の再婚や扶養家族増加でも、事情変更による減額調停が可能です。
Q. 養育費を払う側ですが、所得控除は受けられますか?
A. 子供と「生計を一にしている」と認められれば、離婚後も扶養控除を受けられる場合があります。具体的には、毎月の養育費を継続的に送金していることが要件の一つです。詳細な要件は税理士または税務署に相談してください。
※本記事の算定表・相場・税務は2026年5月時点の一般情報です。算定表の正確な数値は最高裁判所公式情報、税務は税理士、個別の協議は弁護士・家庭裁判所・養育費相談支援センターなど専門機関への相談を必ず併用してください。
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